「魔手、ですか?」
自分に必要なものかどうかは分からない。しかし、この図体のでっかい
男が言うには、特別な能力(ちから)を持った篭手が、どこかにあるという。
くのいちのつけるものとしては、いいかもしれない。しかし、どこにあるのか
よく分からない。とりあえず話は受けることにした。
噂によると、それ以外にも頭や足の防具が手に入るらしい。
修行中にふと見ると、倒した敵が真鍮の塊を落としていた。よくよく見ると、
文字が書いてある。その一つは、間違いなく宝の意味を示すものだ。
ここは、ぼやぁだというところらしい。とにかく、この真鍮の塊はたくさん、
修行の仲間に全員分わたるほどこれを落とした。しかし、宝の箱らしきもの
はぜんぜん見当たらない。冒険を終わった後に探すとしよう。
あった。着替えて、盗賊のなりをした彼女の前に、鎮座している箱。開け
てみる…と、武具など入っていなかった。替わりに、古びた紙切れが3枚
ほど、入っていた不思議に思って覗き込むと…自分の位置が奇妙な光を
出して示されていた。ううむ、失敗か。
そして、また、修行にきた。今度は音を消す油を、鎖靴に念入りに塗りこ
んで。敵からまたしても奪った鍵を握り締め、走り回る。…みつかった。
珍妙な、人間の童子の格好をした草がいるところに、その箱はあった。
開けてみる。今度はちゃんと頭の防具が出た。しかし、見た目が格好が
悪い。口のまわりにまで繊維が張り巡らされている。口を無理やり動かす
ような、そんな変な防具だった。
同じようなことをすれば、夜闇の中を疾走できる脚半が手に入るらしい、
と聞いたのはその直後だった。これさえあれば、夜闇に乗じてげるすぱの
林に分け入り、大陸からやってきた不埒な木材商人より早く、木を伐ること
ができるだろう。またしても、先輩の力を借りなければいけない。
そして、それがあの変態男のいる町の、すぐそばにあると聞いて、少し
嫌気が差した。しかし、これは大きな武器なので、我慢することにした。
魚、魚人、蟹、目玉妖怪…。とにかく、鍵が出なかった。鍵が出たときには、
盗賊が脇をすり抜けて箱を開けた後だった。しばらく、時間を待つ。そして
先輩の一人が、箱を見つけ出した。走る。走る。そして、箱を…開けた。こ
れは、逸品だ…手入れが行き届いていて、洗濯の必要がない。そのまま
履いてみた…。すごく、走りやすい。身が軽い…。
途中の蟹が私を追ってきたが、この足には追いつけない。そのまま、
洞窟の外に走り去る。これで、大陸の身勝手どもを出し抜ける。
喜びに、口元が思わず緩む。そして、叫ぶ。
「たくさんの助力、忝い!」